「愛しのココ 僕がいなくなって 悲しんでくれる君がいたら 少しうれしい」
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そこは夢の世界。人間は動物に、動物は人間に種族を変えて愛おしい生を共におくる。鬼才SHOOWAがボーイズラブの新境地を拓く、切なく野性的な人外ファンタジー。
定価657円+税
Contents
▽ニィーニの森、はじめに
☆ニィーニの森とは……
ファンタジックな森。
場所は、フィンランドの先ともマカオの先とも言われる。
森の中の湖に妖精が住んでおり、満月の夜になると出てきて願い事を叶えてくれる。
肉を食べることが禁じられており、犯したものには罰が下る。
最初に、”表紙はニィーニの森の風景”と思って欲しいです。
この表紙からは内容が分かりませんし、ボーイズラブの部分はなかなか想像付かないかと思います。
ドラマチックな出来事も、深い心の繋がりを感じられる愛も、存分にこの中に詰まっているとは表紙からは予想出来ないです。
しかし中身は、とんでもなく慈悲深くて面白くて壮大な愛のお話になっておりますので、表紙から連想して「BL感なさげ」と思って読まないでしまうのは、、とっっっても勿体ないです!!!
隠れた名作であることをお伝えできれば幸いです……!!!
▽登場キャラクター
<第1話>
ココ:耳の生えた子供。ウルフの前では特にわがまま。恋多きオトメ。
ウルフ:年齢高めなオオカミ。妖精の力で人間の姿にしてもらった。
<第2話>
オメット:うさぎ耳の少年。可愛らしくて心優しい。隣の森とニィーニの森の間に住んでいた。
カエルさん:カエルの着ぐるみ(?)のような姿のカエルさん。湖で泳ぎ、ニィとよく話す。
<番外編>
ハンセン:心優しいカブトムシ。
ギロ:グラントシロカブト。模様のあるっぽいカブトムシ。
<第3話>
オーウェン:コバトール領の領主の息子。喧嘩沙汰で大学を中退になり、数年ぶりに村へと帰ってきた。
タドタ:純ウサギ。過去事故に遭い父親を失ったときに、ハーフのティンバーのお世話になったことから人だとかウサギだとかへの拘りはない。目が隠れるほど前髪が長い。
レニー:アフロヘアーで親切。村で人が殺される光景に嫌気が差していた。ウサギ耳には補聴器が付いている。
アイ・メイ:レニーの妹でオーウェンのお世話係。ちょっとオーウェンをいいなと思っている。
クラヴィッツ:自身の子供を人間に殺された経験から殺人鬼と化してしまったハーフウサギ。
ポップ:タドタの弟。
≪世界感≫
ウサギ:ウサギ族。人間との違いは、ウサギ耳であるということのみ。
※本作品には動物の兎はほぼ出てきません。ウサギ=ウサギ族のことを指します。
妖精:ニィーニの森の湖に居るという、満月の夜に願い事を叶えてくれるとても神秘的な存在。
ニィーニ:森の主っぽい存在。あだ名がニィ。
▽ストーリー
前半はウサギとカエル、ウルフハーフの少年と人間に姿を変えたウルフ、カブトムシ二匹、という三本立てで、後半がウサギ族の壮大なお話になっています。
動物や昆虫、人間たちの不思議な愛のお話。
自然に感情移入してウルッときてしまうのがまた不思議です。
そして本作は伏線が凄く、内容が複雑に絡み合っていたりします。
今回あらすじをしっかり書いてしまうので、内容全く知りたくないよって方はお気をつけください。
各話毎にご紹介していきます。
/第1話
ウサギのオメットは湖の妖精に願いを叶えてもらうべく、森境から子豚を連れてニィーニの森へとやってきた。
彼を見つけて話し掛けたのは、カエルさん。
彼らは毎晩話すようになり、カエルさんはオメットに告白したいとニィに話す。
ココが「オメットには男がいる」的なことをカエルさんに話してしまい、そしてカエルさんその現場を見に行ってしまい、大ショック。
……なのですが、実は、叶えてもらいたい願いというのが「自分と入れ代わって豚となってしまったウサギさんを元に戻して!」というものでした。
オメットはなんと元々豚だったのですね。
なぜウサギが豚であるオメットと入れ替わってしまったのかといいますと、ここニィーニの森では肉を食べることが禁忌とされ、犯したものには罰が与えられます。
そのことを知らなかったオメットは、森境で行き倒れになっているウサギに「自分はもう長くないから食べて!生き延びて!」と悪気なくめちゃくちゃ自己犠牲の精神で言ってしまったのです。
そして耳だけほんのちょっとかじったウサギは、罰として豚と体が入れ替わってしまったのでした。
かくして話は戻り、ココが”オメットは男がいるよ、男と会ってたよ”というのは実はウサギの彼氏のことで、彼はオメットをウサギだと勘違いするフリをして過剰スキンシップでじゃれ合っていた、という事なのでした。
そしてそしてついにやって来た満月の夜。
豚となったウサギを、見事元の姿へと戻してもらうことに成功します。
そのままダッシュでオメットはカエルさんの元へ。
思いっきり想いを伝えて、誤解も解け、晴れて二人は結ばれたのでした!
めでたい^^
びゃーっとあらすじを書き連ねてしまいましたが、先生の絵の感動のほんの一部も伝わらないのがもどかしい。。
最っ高に序盤から心打たれる展開とキャラクターたちなので、絶対に見てほしい作品です!!
/第2話
人とウルフのハーフであるココは、おじいちゃんウルフに群れでの迫害から助けられていた。
二人は自由を求め、ニィーニの森を目指すことに。
なんとかたどり着き、満月の夜。
妖精にお願いして晴れてウルフは人間の男となったのです。
しかしウルフは元々病気していたこともあり、あまり長くは持たない運命でした。
二人で過ごすのどかな日々。
次第に体力が衰えてきたウルフ。
ココが大きくなるのを見届けて、ウルフは再び満月の夜の湖を目指すのでした。
そして、この後ウルフがどうなったのかは描かれておりません。
慈悲深いウルフ。
人の姿もさることながら、獣の姿も凛々しくてとてもかっこいいものでした。
居なくなってしまったのか、または満月の夜の湖に間に合ったのか、それとも。
様々な想像を読者にさせるような終わり方でした。
最後の方、ウルフのセリフに思わず涙してしまいます。
泣けました。。
/番外編 蛹の脚
蛹のハンセンとギロは暗闇の中で、互いに脱皮の時期を迎えていた。
励まし合い、そして地上に出たら必ず会おう、と誓うのだった。
カブトムシ二匹が主役の本作。
なんでか、すんなりと受け入れられます。
何の因果か、ペットとして出荷されたハンセンは子供に飼われ、虫同士のバトルをやらされ、その相手としてギロと再会します。
しかしギロは、地上のあまりの残酷さゆえか自我を失くしかけていました。
必死にハンセンは話しかけ、なんとかギロの心を取り戻すと、運よくお金持ちの青年に二匹とも引きとってもらうこととなりました。
その青年が部屋で彼氏らしき人と話すのは、幻のニィーニの森の事。
「このオス通しで仲良しな二匹も連れて行きたいね」と、飼い主の青年と彼氏は話すのでした。
なんともメルヘンチックで、心が温まるお話。
カブトムシのハンセンの純粋な眼差しと言葉の真っ直ぐさに、つい心打たれてしまいます。
短い中に感動がギュッと詰め込まれていました。
強くて優しいカブトムシ二匹、素敵です。
/第3話 前編
村の領主の息子として生まれたオーウェンは、ウサギを畜生扱いする事に対して子供の時から疑念を抱いていた。
そんな彼は、十四歳から留学に出て世界を見た。
そして大学へと進学。
自由過ぎる学生生活だったが、喧嘩沙汰を起こして退学してしまう。
しばらくぶりに村へ帰ると、そこは大分様変わりしていて。
帰った先の村では、とんでもない事態が。
ある疫病が流行ってしまい、誰かが「ウサギ肉を食べたら治った」と言った。
そこで村の人間達は、なんとウサギの乱獲を始めたのです。
すると今度はウサギが反撃に出るようになり、人とウサギ、お互いがお互いを大いに恐れて怖がるという状況に。
また久々に故郷へ帰ると、オーウェンの母は疫病に倒れ亡くなっていました。
そして彼女は、オーウェンに手紙を残していたのです。
その内容がまた衝撃的なものでした。
要約すると、
『私は人間とウサギのハーフで、あなたにもウサギの血が流れている。兄弟の肉を食べるなんて私には出来なかった。あなたは間違っていない、正しい』
と、書いてありました。
この時初めてオーウェンは自分がウサギと人間のハーフであると知ります。
この母の手紙が、オーウェンを強く突き動かすこととなりました。
/第3話 中編
オーウェンは森へ行き、ウサギ族と接触することを試みる。
早速仕掛けられた罠にはまり毒で意識を失うも、誰かに助けられた。
目覚めるとウサギ族のレニーが妹アイ・メイと共にオーウェンを看病していた。
それからオーウェンはレニー指導の元カチューシャを被り、ウサギ族に擬態をして村で過ごすこととなる。
森の中でニンジンを置くとすぐに子供のウサギ=ポップがやってきた。
彼に話し掛けるも、すぐさま別の青年ウサギと共に逃げられてしまう。
そうこうしているうちにまんまと罠にはまり、意識を失ったのでした。
実は助けてくれたのが、この時ポップを連れて逃げたかに思われた青年ウサギ、タドタなのです。
それからはオーウェンのウサギ族擬態化生活が始まりました。
そしてレニーも人間を村で処刑することをあまり良く思っていないことを知ります。
一方でタドタは村から遠く離れた場所で、人間のおばあちゃんや人間とウサギのハーフである人物に、オーウェンの情報を渡していました。
後に分かることなのですが、オーウェンの探していた親戚というのが、なんと殺人鬼クラヴィッツだと判明。
まさかのクラヴィッツさん……
彼は自分の母親が人間であるにも関わらず、自分の子供を人に殺されたことが許せず、人殺しをしまくっておりました。
タドタいわく「彼はもうおかしくなっている」とのこと。
/第3話 後編
オーウェンは打ち解けてきた子供たちの前で耳を取り、クォーターであることを打ち明ける。
たちまち村中が騒ぎになり、オーウェンは明日、村から出て行くよう言われてしまう。
レニーと証人である少年けーすけを連れて村を出るオーウェン。
一行はオーウェンの村を目指すのだったが、クラヴィッツたちに奇襲を掛けられてしまう。
そこへ噂を耳にして駆けつけたのが、タドタでした。
間一髪クラヴィッツの攻撃からオーウェンを救ったタドタ。
なんとか逃げ延びた二人は、夜の森で互いの心境やこれからの事を話しあいます。
オーウェンは交渉が上手くいったら、ニィーニの森へ行こうとタドタを誘うのでした。
そして無事故郷へと帰ったオーウェンは、はぐれていたレニー&けーすけと再会。
村人達へと”ウサギ猟禁止、破ったものもれなく死罪”という規則を発表したのです。
ウサギ族との話し合いをするといい、翌朝故郷を発ちウサギ族の村へと戻ろうとするオーウェン。
そして待ち受けるクラヴィッツ・タドタ。
後ろにはウサギを狩ろうと付いてきた人間の狩人達。
ウサギ、人間、それぞれの過激派と保守派。
たちまち一触即発の状況となります。
そしてついに作戦が遂行されるのです。
オーウェンはヘルシンキとアイ・メイに助けられながらクラヴィッツから逃げつつ応戦、タドタはクラヴィッツを引き連れるふりをして崖へと誘導……
けが人や死者が出てしまうような戦場と化したのです。
そして死にそうになりながらもなんとかニィーニの森へとたどり着いたオーウェン。
住まいを借りてタドタを待ち続けるのでした。
……かくして目的の地ニィーニの森へと到着したオーウェン。
気になるのはウサギ対人間のその後ですが、戦いの中でアイ・メイが「誰かが生き残ってこの問題を引き継がなければいけない」と話していました。
おそらくこれは、オーウェンはやれるだけのことはやった、あとはウサギ側の問題児クラヴィッツ次第、ということだったのかと思います。
そして当のクラヴィッツはタドタに裏切られる形で、タドタ共々崖の底へと落ちていったのでした。
落ちていくタドタの目からが涙が溢れ、こうするしかなかったという心の叫びが聞こえてくるようでした。
/描き下ろし
「ブタになっちゃったのにどうやってここまできたの?」というお話。
ウサギに戻ったタドタとオーウェンが、オーウェン宅でまったりお茶をする。
第1話でウサギ少年オメットが連れていた入れ替わってしまった豚が、なんと崖から落ちてなんとか生き延びつつも死にそうになっていたタドタだったんですね。
第3話ラストが第1話の二人に繋がるなんて、ものすごい衝撃的でした。
謎にオメットが青年=オーウェンから抱きしめられていたのも、彼とタドタを重ねて感極まったオーウェンがつい抱きしめてしまった、ということだったみたいです。
もう全部がここに通じていたなんて、知った時には本当に驚きました。
そしてさらに衝撃、タドタの「つーかお前ブタの俺とやったよな」というセリフ。
なん、ですと……?
ブタタドタとヤった……だと……?
(゜-゜)
ヒィーーーーン
そのシーン見たかったーーー
食肉禁止のニィーニの森でその行為はギリギリもしくはアウトかーーーー
完。
▽SHOOWA先生の世界感にどっぷり浸れる
バラバラなように見えて、実は全部の話がニィーニの森に通じているのが本当に感動的で素晴らしいです。
表紙を見て「難しそうだな」「細かそうだな」「ラブっぽくなさそうだな」とか一瞬思うかもしれませんが、全くそんなことはないのでご安心下さい。
超絶深い愛情が満載。
BLの魅力がドバドバ溢れかえる漫画です。
▽「ニィーニの森」という場所
なんでしょうこの素敵な場所は。
ニィーニの森、素晴らしすぎですね。
強く引き込まれるような引力があるこの一冊。
ぜひそれぞれのキャラクターが強く、ラブリーに生きる世界を覗いてみてください!!