惰性で毎日を送っていたコンビニ店員の幸紀(30代)は、うっかりチンピラに刺され瀕死になった折、遠のく意識のなかで、真っ白い羽の美しい「天使」を見た───。
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お迎えかと思いきや、その後すっかり完治して帰宅してみると、そこにはあの時の天使が…。天使のふてぶてしい態度に戸惑いつつ、記憶もなく、飛べないというのを不憫に思い、天使をしばらく家に置くことに。 突然はじまった奇妙な同棲生活だったが天使との日々は、死んだように生きていた幸紀の心にある感情を芽吹かせて──。あなたは、この関係をなんと名付けますか?
デビューまもなく、自身が執筆した短編「止まり木」をセルフリメイクした意欲作!
出版社:祥伝社 発売日:2019/3/25
Contents
▽「ワンルームエンジェル」、神……
人生投げ気味のヤカラ男×感情シェア天使。
極めて平凡な男性の元に天使が舞い降りてくるというびっくり設定の本作。
ファンタジーなのねーと思って油断すると泣きますね…
兎に角、泣けます…。
お二人の関係性の尊さったらないです。
しんどすぎる尊さ。とても深い愛のBL。
読了後は、まるで一本のハートフル映画を見た気持ちになるのではないでしょうか。
しばらくは二人のことが頭から離れない事態になる可能性があります。
▽はらだ先生……?!
はらだ先生といえばもちろん、個性豊かなキャラクターにアングラものからアホエロものまで多種多様な作品を描かれる、守備範囲広めのマルチな超天才作家さんかと思います。
お話の起承転結の完成度の高さや、兎に角エンディングに向けての盛り上がりが上手かったりなど、ストーリー性にも長けており、「……面白いッッッ!!!!」と心の底から何度叫んだことか……というかんじです。
イラストカード、グッズ等で色が付くとこれがまたお洒落で。
センスが素晴らしすぎて大変。
そしてそんな中身の濃いものばかり描かれるはらだ先生といえば色気のある描写ですが、なんと、本作は健全。
健全を描かれました。こんなことってあるんですね。
▽健全はらだ先生…すご…
結果、すごかったです。
はらだ先生に色気を求める必要は無かったんや…と錯覚します。
「アングラからアホエロまで〜」と勝手に解釈しておりましたが、とんでもないです。
はらだ先生は読者を大号泣させるほどにお話の展開を作るのが上手いです。
それがこちらの作品には詰まってます。
▽天使とは
可愛らしい顔の少年で、大きな白い羽が生えている。
根元は触られるとこそばゆいそう。
彼はナイフで刺された幸紀の目の前に突如現れたかと思うと、勝手に幸紀宅に住み始めます。
なんでも近くに居る人間の感情の影響をもろに食らうようで、厄介なのは人の負の感情により羽が抜け落ちてしまうことです。
いつも隣にいる幸紀からはしょっちゅう感情が流れ込んで来ているため、幸紀は隠し事が出来ません。
それから天使には記憶が無く、何故自分が天使なのかわからないのです。
常に敬語口調ですが、かわいい顔をして言うことが結構辛辣です。
▽強面優男 幸紀
三十路コンビニ店員クビになり申した男。
趣味なし友なし恋人なし。
人生諦め系という美味しい設定。
一見するとダメ男ですね所謂。
最高じゃないですか。
ダメ男が出てきたら最高に決まってるじゃないですかはらだ先生の作品は。
案の定、後半からダメじゃない男になってますね。
天使さんとダメ男の関係性はドラとのびに似てるかも。
道具は出せないけどその分優しい言葉(欲しかった言葉)を掛けてくれます。
▽もっと細かく(展開バレ)
天使は記憶を取り戻すべく居候をして過ごしますが、外に出ればたちまち人の負の感情をもろに受け苦しみます。
そんな彼のルーツを探ろうとする幸紀。
次第に明らかになる天使の過去。
幸紀が刺されたその時、何が起こっていたのか。彼は本当に天使なのか。
ならばなぜ、彼は現われたのか。
全てが判明したその先に、二人が見たものとは……というクライマックス展開になってます。
感想でよく「好みが分かれる」というのがありますが、本作はそれが然程無いかなと思います。
苦手意識を持つ人は少ないんじゃないでしょうか。
それくらい広範囲の人が純粋に楽しめる一冊かと思います。
▽余談ですが…
先日はらだ先生がpixiv内にて作画風景の配信(パソコン画面を映したもの)を夜通し行ってました。
朝方4時ごろまでだったと思いますが、その辺りの夜更けどころか朝方にも関わらず、常時100人程の閲覧がありました。
本作とは別になりますが、そこでは「ラッ○ードッグ1」というBLゲームのファンアートを描いており、絵が出来上がる工程が見れた喜びはもちろんのこと、なんとも早すぎる作画スピードに驚き慄きつつ見てました。
アタリを描かずに顔の中身も髪も輪郭も服も全て描いてしまうので、なにがなんだか。
少し目を離した隙に車が描き終わってたり、もうわけわかめ。
トイレ休憩の太文字で書かれた「トイレ」までお洒落なのはなんなのか。
不思議ーと思って見てました。
たまーにされてるので、気になる方はチェックしてみて下さい。素人からすると魔法のように絵が出来ていく様子は、見ていてとても面白いです。
▽なんだろうこれ、良すぎて
「ワンルームエンジェル」。確実に胸が温かくなる作品です。
感動的で、涙はめちゃくちゃ出ると思います。
それが何なのかは、ぜひ一度読んでいただいてお確かめ下さい。
個人的には、一読目は、読み終わると展開の面白さ、キャラの可愛らしさ、感傷、愛、温かみ、切なさや儚いといった気持ちがひしめき合って感情の整理がつかないでいました。
ただ「とても良いものを読んだ」と感じたことは確かでした。
期間を空けて再読。まただばだばに泣いたものの、作中の言葉や展開の意味等に理解が深まり、一読目とは比べ物にならないくらいに幸せで、温かな気持ちになりました。
この物語は幸せなお話なんだ、ということが初めて理解出来ました。