2012年7月25日に刊行された雲田はるこ先生の漫画作品、新宿ラッキーホール。
大人のままならない十数年間を描いた連作ラブストーリーで、不朽の名作と名高いこの作品の感想をご紹介します!
ビデオに売られるため、仕込みヤクザ・サクマと同居し同性とのプレイを覚えさせられた桧山苦味。やがてポル○スターとなった苦味はサクマをヤクザ生活から抜け出させたいと思うようになるが━━?
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大人のままならない十数年間を描いた連作ラブストーリー、後日談「Lucky Boy」を17P描き下ろし!
桧山苦味
Contents
▷「新宿ラッキーホール」はじめに
かつては美少年、
その後はポ○ノスター。
パンツ一枚でポーズを決める男性。
表紙を見てなんとなく買わないでいるな、という方も多い気がします。
たぶん想像するよりもきっと、絵がバランスよく美しく、かなりお洒落な内容になっています。
お話の流れとしては、はっきりと分かれた6部構成で、時系列が途中変化します。
桧山苦味
▷「新宿ラッキーホール」登場人物が素晴らしい
全員濃くて特徴ありまくりで素晴らしいです。
物語は主に苦味とサクマの営むゲイビ会社周辺で展開されます。
苦味……ヒゲ有りは、憎めない可愛げのあるおじさん。少年時代は美形。そのギャップがとてもいいです。いい意味で擦れた感が程よい。
サクマ…893になりきれなかった人。顔が怖い。苦味とは、常人にはわからないようなとてもとても深い愛で繋がってるよう。
斎木…22歳。苦味のゲイビ会社勤務、編集作業等。苦味をアイドル的に崇拝する。
レニ…関西弁を話すハーフ。21歳。斎木がかわいい。
竜…サクマが抜けたとこの組長息子。
カタギリ……サクマにスカウトされ苦味の事務所へ。
サクマさん
ざっと書いただけでも味があって癖の強い人達ばかりです。
何角関係にもなっているようですが、決して悲恋ではありません。
大前提に苦味とサクマ、そして二人を取り巻く他の面子もそれぞれ別の形で幸せを物にしているように思いました。
ダークな社会でアングラな世界観に思えますが、救いがあり、愛がありますので決して重苦しい気持ちにはならずに読めると思います。
また絵柄が可愛らしく、キャラクターの表情がとても豊かなので、その辺も楽しめるんじゃないでしょうか。
本当に、『THE・キャラクター』といった節々に丸みのある懐かしさを感じるような作風です。
以下細かくストーリを見ていきます。
▷「新宿ラッキーホール」893でポ○ノなストーリー
各キャラクターの魅力がたっぷりと詰まった本作のストーリーをご紹介します。
【①苦味の元を訪ねる真面目リーマン片桐君】
ワケあり元会社員、カタギリ君がサクマさんスカウトの元、苦味の事務所へとやって来ます。
初っ端のお話がメイン以外のキャラとの絡みという、なんとも斬新な入り口です。
カップリング的には「サクマさんではないの…?」となってしまいそうな所ですが、ご心配なく。
カタギリさんの純粋無垢で真面目な性格は灰汁が無く、好感が持てます。
それに“これは苦味の仕事の一環だ”と理解していれば読んでいてなんてことはありません。
むしろ苦味の魅力が詰まった紹介シーンと考えたらいいかなと思います。
【②サクマと竜の話】
道でスカウトをしていたサクマがたまたま声を掛けたのは、かつて在籍していた組の、組長息子の竜だった。
そこから竜の抱える事情が少々やっかいで…………。
苦味だけでなく、サクマさんまで別の人が来ちゃうの!?ってかんじですが、この出来事が逆に、苦味とサクマのただならぬ仲をより引き立ててくれます。
【③レニと斎木の話】
苦味をアイドル的に愛する斎木と、そんな斎木を可愛がるレニ。
ある日のこと、撮影を予定していたレニの絡み相手の新人男優が飛んでしまい、急遽苦味が出演することに。
三人での絡みがあり、全員が欲望を出してくるので色っぽさのオンパレード。
色気が爆発してます。
斎木とレニ、それぞれが撮影中、その欲を露わにするシーンはドキドキすること間違いなしです。
【④<過去篇>高校生苦味、借金のカタにサクマ(25)の元へ】
サクマが当時組長から任されていた仕事の一つに、「男を仕込む」というものがあった。
苦味も親の借金のカタに、何も知らずに連れてこられた一人。
893もホモも初めて見たという苦味は、最初こそ怯えていたものの、天性の子分肌を発揮してサクマと上手い具合に仲良く過ごすようになっていく。
気付いた時にはもう手遅れで。
決して抱えてはいけないはずの“情”が、二人に重く伸し掛かります。
苦味の異変に気付いて慌てて帰宅したサクマが見たものは、銃を片手に倒れる苦味の姿でした……。
怒涛の展開。
それぞれの葛藤に胸が熱くなります。
【⑤<続・過去篇>苦味(23)と三十路サクマ仕事の日々】
苦味はポルノスターKとなり稼ぐ日々。
借金返済のことなどでボロボロになるまで毎日働くサクマを見ていた苦味は、組長に対してある行動にでる。
”転”にあたるこの部分は、ハラハラして大変でした。
なんと苦味が大金を抱えて組長に直談判しに行くなど、893な部分が出てきます。
といいつつお茶面なシーンもあるので、きっと楽しく読めるはずです。
【⑥苦味とサクマの恋仲】
苦味の元に母親が会いに来る? 来ない? というお話。
「しにたぁーい」と言いながら精力剤ガブガブ飲む苦味が大変かわいいです。
苦味とサクマ、二人の関係がこの章で上手くまとめられているなぁと感じました。
2013年発行の作品でありながら、根強い人気のある本作。
ストーリーが非常にバランスよく構成されており、一冊の中に各々のキャラクターの魅力が存分に詰まっています。
▷「新宿ラッキーホール」2020年現在の展開は?
2020年現在、なんと6年越しに待望の第二巻が刊行され、ドラマCDも1・2と発売中です。
衰えない人気を誇る秀作ですので、彼らの世界が気になったという方はぜひ覗いてみてください。
