新進気鋭のフォトグラファー、フランツ・シューマンはある日運命の出会いを遂げる。
http://www.comicbox.co.jp/baby/contents/bc60_unknown.html
漆黒の髪、憂いを帯びた新緑の瞳、陶器のような白い肌を彩る数々の痣すら神々しい、美少年…ジェイ。
素性を一切語らない謎めいた彼を専属モデルとして傍に置くフランツは、時が経つにつれ、ジェイを心から愛し始めるがーー。
表題作をはじめ、胸が締め付けられるほどの”切なさ”を凝縮した
たらつみジョン、デビューコミックス。
駆け出しのカメラマン×ミステリアスなモデル
ほか、胸が締め付けられるほど いじらしい少年たちの全6編、珠玉の短編集。
こんなバッドエンドが見たかった
報われない片思い、身体を張った献身、嫉妬によるすれ違い…
健気で一途な男たちの恋は、痛々しくも愛おしい
収録作品:アンノウン/Robot/アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー/正方形のアイスクリーム/たのしいのかたち/Make haste slowly./Bonus track/あとがき
発売日2015年5月23日 価格本体675円+税版形 B6判・194p
Contents
▼ バッドエンドとは
バッドエンドと一口に言っても様々あり、決別や闇などが挙げられます。本作では「こんなバッドエンドが見たかった」とあるように、それぞれのお話はよくあるハッピーエンドとは異なった終わり方を迎えます。本作「アンノウン」はアンソロジー形式で6組が登場し、各々全く違った形の恋愛を繰り広げていきます。正直な感想を言うと、一見悲劇のように思えますが、
救いはあります。闇に堕ちても、苦しみに顔を歪めても、泣いても。
それぞれが何かしらの幸せは掴んだ、と感じました。
創作絵や旅行写真がたくさん
▼ 各話ストーリー
以下、目次ごとのストーリーをご紹介。
/アンノウン
こちらは表題作になりまして、あらすじに記した通りです。
ジェイそのものが、儚い夢を見ていたような存在。苦しい悲しい、そんな気持ちを掻っ攫ってしまうまさかの結末です。
/Robot
先生はロボットの青年に「もっと人間らしく」と、「欠陥品だ」と言う。無機質なはずの胸が痛むはずもなくて……。
説明自体があまり無く、ロボットの青年が先生からしつけを受けている、というお話。ページ数が少ないながらも、しっかりと刺さるものがあります。
/アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー
ホモと言われ気持ち悪がられる地味系の学生シモンは、派手めなグループに属するミカが気になる様子。周囲と同じくシモンを毛嫌いするミカだったが、しかし彼には片思いの相手がいて。
本作の中では比較的ライトなお話かと思います。一生懸命に真っ直ぐで健気なシモンが可愛くて、直向きさに心打たれます。そんな彼を嫌がるミカでさえも、途中から段々と可愛く見えてくる不思議。
/正方形のアイスクリーム
「枠にはまらなくては」。そう思う高校生藤本は、隠れて女装をすることで自分の枠を増やした。親にバレまいと必死に隠す彼に、手を差し伸べてきたのは担任の大杉だった。追い詰められた藤本は女装姿のまま大杉の家を訪れる。
驚きの展開に、一番「ぉおふ……」となりました。なんだか掴み所のない教師だな、と思いきや、しっかりクズです。クズ好きな方には刺さるかもしれません。
闇堕ちレベル★★★★★☆☆
/たのしいのかたち
吉野がたまたまクリックした動画には、なんと尊敬する先輩そっくりの人物が盛大に善がる姿が映っていた。優等生な先輩の筈なのに、動画の人物はピアスやタトゥーだらけ。これは先輩なのか、それとも他人の空似なのか。本人を前にギクシャクしてしまう吉野だったが……。
一言で言うと道連れです。でもボーナストラックを読むとそんなこともないかも? 彼らなりに着地点を見出したのだと思います。
闇堕ちレベル★★★★★★★
/Make haste slowly.
バイのよみは美大生時代、同学年の栄二郎と付き合っていた。同棲もして順調かに思われた2人の関係だったが、成績の差に負い目を感じたよみの言葉により、その関係は脆く崩れる。
現在と過去の彼らが描かれています。こちらのお話は、もっとも救いがあったと感じました。泣けます。学生時代から大人へと、自分たちの意思とは関係なく変わってしまう。当時、言葉を選んでいたら、もう少し優しさがあったなら。あの頃には戻れないけれど、会って昔を懐古することは出来る。読んでいて、そこに希望を見出しました。
/bonus track
各話のその後。
これを読むと、皆んな各々、何かしらの幸せを手にしたと安心できます。幸福の形は人それぞれなのだと強く感じました。
「アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー」なんかは5年後のイケてるシモンが見れちゃいますし、「たのしいのかたち」は先輩がかわいい感じに。まさにボーナストラック。
よみ
▼ たらちねジョン先生、絵柄について
個人的にはセンスの塊だと思います。
絵のクセが結構強く、カチッとした系の絵柄ではありませんが、そこがまた「彼らの生きている世界」を臨場感たっぷりに伝えてくれています。特に笑顔、笑った時のキャラクターは本当に幸せそうで、良いものです。
それと体のライン、くねっとした腰や細くて硬そうな肩など、素晴らしくセクシーな線を描かれます。
▼ 最後に
最高にダークでクールな短編作品集。表紙を見てビビッと来た方は絶対に買って損はないはずです。
各お話が濃密な世界観を確立しているので、大満足の一冊になるのではないでしょうか。おすすめです。
たらつみジョン(たらちねジョン)先生Pixivアカウント。
素敵……。